DailyReport巻頭言

2018年12月 月初の言葉 「礼」と「法」【DailyReport巻頭言 第99回】

DailyReport巻頭言第99回社会福祉法人永生会清流苑

今月の表紙:社会福祉法人永生会 介護老人福祉施設清流苑

韓非子の考えは、学派の分類でいうと「法家」と言います。それは「法」という考えを重視したからなのですが、そのことを理解するためには、これまでも述べてきた性善説の「礼」を述べねばなりません。

韓非は元々儒家の荀子の「性悪説」を学んでいたルーツがあります。そこで知ったのが「礼」という考えです。「忠」という上司に対する部下の考えは「忠臣」などであらわされるように現代社会でも通用するものでしょう。しかしこのまごころの部分は目に見えません。それを目に見える形であらわすべき、という考えが「礼」です。目で見てわかる、ということなのです。しかし韓非が提唱したのはその礼をさらに追及した「法」でした。

「礼」とは長い間に人間社会の中で培われた価値観であり、暗黙のルールと言え、だから曖昧なところがあったのです。韓非は、それを明文化して「法」としたわけです。「〇〇といったことはしてはいけない」「それをしたものは厳罰に処す」といった明文化したものが「法」であり、「法律」のルーツと言ってもいいものです。この「法」を持って治める国のことを「法治国家」と言い、秦の始皇帝が、韓非子の存在を知り、この統治システムを自分の国に取り入れたいと願ったものだったのです。

法は過ちを凌(しの)ぎて私(し)を外にする所以なり。厳刑は令を遂げて下を懲らす所以なり
(『韓非子』有度 第六)
(現代語訳)
法とは人の罪過をおしとどめて私情をなくさせるためのものであり、きびしい刑罰は法令を遂行して下々を懲らしめるためのものである。

法信ならざれば則ち君の道危うく、刑断ぜざれば則ち邪はたえず。
(『韓非子』有度 第六)
(現代語訳)
法が確実に行われなければ、君主の前途は危険になり、刑罰が厳重に処断されなければ悪事はおさえきれない。

巧匠(こうしょう)の目意(もくおく)は縄にあたるも、然れども必ず規矩(きく)を以て度となし、上智の捷挙(しょうきょ)は事にあたるも、必ず先王の法を以て比と為すと。
(『韓非子』有度 第六)
(現代語訳)
「腕の良い大工は目測だけでもくるいはないが、それでも必ずコンパスや定規を使って測る。頭の良い知恵者は不意の判断でも誤りはないが、必ず古代の聖王の法に照らして考える」と言われている。

韓非の時代の国を治める、ということは現代社会で言うならば会社や法人を治める、ということです。その厳しさは現代社会とは比較にならないものがあります。しかし法を用い「信賞必罰」を以て統治する、とシンプルに考えるならば、我々にとっても十分に耳を傾ける価値があるのではないかと思うのです。

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ABOUT ME
堀田慎一
経営コンサルタント/MBA/大阪市立大学大学院非常勤講師 1992年より2015年まで大手経営コンサルティング会社にて勤務。うち2002年から2005年まで一般財団法人医療経済研究・社会保障福祉協会医療経済研究機構にて勤務。2016年より一般社団法人国際福祉医療経営者支援協会代表理事。