DailyReport巻頭言

2019年4月号 月初の言葉 将に五危(ごき)有り【DailyReport巻頭言 第103回】

孫子の九変篇には、以下のような内容があります。

故に将に五危(ごき)有り。必死は殺され、必生(ひっせい)は虜(とりこ)にされ、忿速(ふんそく)は侮られ、潔廉(けつれん)は辱しめられ,愛民は煩わさる。凡そ此の五者は,将の過ちにして、兵を用うるの災いなり。軍を覆し将を殺すは、必ず五危を以てす。察せざる可からざるなり。
(『孫子』九変篇)

(現代語訳)
そこで将軍には、五つの危険がつきまとう。思慮に欠け決死の勇気だけなのは殺され、勇気に欠け生き延びることしか頭にないのは捕虜にされ、怒りっぽく短気なのは侮蔑されて計略に引っかかり、名誉を重んじ清廉潔白なのは侮辱されて罠に陥り、人情深く兵士をいたわるのは兵士の世話に苦労が絶えない。およそこれら五つは、将軍としての過失であり、軍隊を運用するうえで災害をもたらす事柄である。軍隊を滅亡させ将軍を敗死させる原因は、必ずこれら五つの危険のどれかにある。充分に明察しなくてはならない。

五危とは、「必死」「必生」「忿速」「潔廉」「愛民」のことを指します。

「必死」の勇気とは、たしかに将軍に必須の資質ではあります。しかし将来を見通す息の長い思考力が伴わぬときは危険です。それは単なる猪突猛進の武者となり、むざむざ戦死してしまいます。

「必生」としてあくまで生還を期そうとする粘り強い忍耐心は、将軍として確かに必要な資質です。しかし決死の覚悟が伴わないのであれば、単なる臆病者の優柔不断、そこでぐずぐず思案しているうちに、敵に囲まれて捕虜になってしまいます。

「忿速」として闘争心が旺盛で、決断が速いこと自体は、将軍にとって必要な資質です。しかし一方に沈着冷静な洞察力が伴わなければ、こうした将軍は侮辱、挑発されると、頭にかっと血が昇り、前後の見さかいなく進撃して、まんまと敵の謀略にはまり込んでしまいます。

「潔廉」として人格が高潔で、利欲に目が眩まないこと自体は、将軍にはたしかに必要な資質です。しかし汚濁をかぶっても平然としているだけの図太さに欠けるならば、単なる道徳家です。こうした将軍は、卑怯者などと罵られると、そのわずかな恥辱にすら耐えきれず、颯爽と戻ってきては討死したりしてしまいます。

「愛民」として部下を愛護しようとする慈悲心それ自体は、大勢の命を預かる将軍としては、確かに必要な資質です。しかし一方に非情な意志の強さを持ち合わせなければ、単なる人情家です。こうした将軍は、兵士の面倒を見ようとしたあげく、つぎからつぎへと生ずる厄介事の前に、心身ともに疲労し衰弱してしまいます。

難しいのは、愛情があり正しいことをしていると思える場合でも、決してそれが正解ではない場合もあり得るということです。強さだけではいけないし、優しいだけでもやっていけない、ということを我々経営者は再考する必要があるのかもしれません。

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