DailyReport巻頭言

2018年3月 月初の言葉 孟子の「性善説」を考える【DailyReport巻頭言 第90回】

2018年3月医療法人博仁会 志村大宮病院

今月の表紙:医療法人博仁会 志村大宮病院

「孟母三遷」や「孟母断機」という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。「孟子」の母親に関する逸話とされているものです。「論語」の時代から約百年後に活躍した儒家の一人であり「性善説」を説いた人物です

「孟母三遷」は孟子のお母さんが、子供の頃の講師の環境に考慮して住居を三度も変えたことを言います。初めは墓地の近くに住んでいたので子供の孟子は葬式ごっこをするようになったので市街地に引っ越しました。そうすると今度は商売の真似をして遊ぶようになりました。そこで最後は学校の近くに移り住んだ、ということです。子供の教育環境がいかに大事なのかを考えさせられる内容です。現代でも住居地として文教地区というのは人気があります。2,000年以上たってもこのことは変わらないのですね。

「孟母断機」は、勉強を途中で投げ出した孟子に対して、母親がせっかく苦労して機織り機で作っていた布を断ち切って、勉強を中断することはこのように全てを無にすることと同じだ、と言って叱った、というものです。両方とも信ぴょう性には乏しいと言われていますが、母親の子供に対する教育のありようが示されているものと考えられます。

そのような環境で育った孟子は、自分に厳しく育ったのでしょう、このような言葉をのこしています。

行(おこな)いて得(え)ざるものあれば、皆諸(みなこれ)を己(おのれ)に反求(はんきゅう)す。
(離婁上篇)

(現代語訳)
何かを実施してみて、思い通りにいかなかったときは、その原因は自分にあると反求(反省の意味に近い)してみる。

現代社会でよく使われる言葉としては『自責』(自分の責任)という意味に近いかもしれません。悪いことが起こってもそれは他者ではなく自分の責任なのだ、ということです。

また、このような言葉ものこしています。

君の臣を視ること手足の如くなれば、則ち君の臣を視ること腹心の如し。
(離婁下篇)

(現代語訳)
人君が臣下を自分の手や足のように大切に扱えば、臣下はその恩義に感じて君主を自分の腹や心のように大切に思うものです。

上に立つものが、責任を一身に背負い、部下たちを自分の体のように慈しみ大切に扱うことで繁栄をもたらす、ということでしょうか。ただし経営者がこの境地に至るまでには塗炭の苦しみの歴史が欠かせないようです。この点については次回に触れたいと思います。

孟子は「性善説」を唱えました。中には人間の本性に善・不善の区別はなく善となるか、不善となるかは後天的に決まる、と言った人も数多くいました。またここでもご紹介しようと思いますが、その一人に「性悪説」を唱えた「荀子」も含まれます。実際そのほうが説得力もあるように感じます。世の中を見ても悲惨な事件は後をたちません。それを考えるといっそうそのように思えるのです。

しかし孟子は「性善説」にこだわりました。それはやはり、世相がどんどん暗くならないためには「希望」が必要だったからではないかと思うのです。人の善を信じなければ、お互いが疑心暗鬼を生み、世の中が悪いほうへ悪いほうへ進んでしまいかねないために「性善説」をひろめていったのではないかと思います。

このあたりの考え方の本質は、この誌面だけでは説明が足りない部分もあるのですが、マネジメントを考える上でも非常に応用ができるところになってきます。このあたりが、古典がいつまでも読み続けられる所以でもあります。

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ABOUT ME
堀田慎一
経営コンサルタント/MBA/大阪市立大学大学院非常勤講師 1992年より2015年まで大手経営コンサルティング会社にて勤務。うち2002年から2005年まで一般財団法人医療経済研究・社会保障福祉協会医療経済研究機構にて勤務。2016年より一般社団法人国際福祉医療経営者支援協会代表理事。