今月の表紙:社会福祉法人 暘谷福祉会 シニアレジデンス暘谷苑
先月は荀子について述べました。今月も引き続き荀子について触れたいと思います。
儒教では、五常(ごじょう)(仁、義、礼、智、信)を重要視し、父子、君臣、夫婦、長幼、朋友の五倫の道をまっとうすることを説いています。それぞれを簡潔に述べると以下のようになります。
「仁」とは、人を思いやること
「義」とは、私利私欲にとらわれることなく、なすべきことをすること
「礼」とは、「仁」を具体的な行動として表したもの
「智」とは、道理をよく分かっている知識豊富なこと
「信」とは、約束を守り誠実であること
荀子はなかでも特に「礼」を重視しました。
「不言実行」、「有言実行」という言葉があります。日本人はどちらかというと「不言実行」という言葉の方が好きなのではないでしょうか。物事は黙って推進することが是、という風潮があるように思います。しかしこのことは、やるのかやらないのかが本人任せになってしまって結果が曖昧になる恐れがあります。
反対に「有言実行」はどうでしょうか。前もってやることを明確にしているので周囲から見ても何をしなければいけないのかわかりますし、評価もしやすいのです。ただし「不言実行」に比較して「有言実行」は言い訳する余地がなくなり、本人の負担は重くなります。
これらはどちらが正しい、というものではなく、その考え方やプロセスが違うということです。
儒教の中でも内面重視派と外面重視派の二つがあります。荀子が説く「性悪説」は外面重視の考えであり、まずは外面を整えその後内面を磨く、ということになるでしょうか。学生時代「服装の乱れは、心の乱れ」といった形で注意されることがあります。これこそが「礼」を重んじる、ということにほかなりません。
緩んできているという意見もあるでしょうが、我が国は「礼」の重要性を知らないうちに徹底されているところが多いと思います。お互いが会ったときのお辞儀を始め、様々なところで暗黙の常識(「礼」と呼べるものが多い)がたくさんあります。そのちょっとしたやりとりの中でお互いの人物を心中で評価していることも多いものです。
荀子はこう述べています。
体は恭敬にして心も忠信、術は礼儀にして情も愛仁。天下を横行すれば四夷を困むと雖も人は貴ばざることなし。
(『荀子』修身篇)
(現代語訳)
恭敬な態度、誠実な心、礼儀(社会規範)にかなった動作、仁愛の情、こういう人物が天下をあまねくめぐれば、たとえ四方夷狄の地をきわめようとも万人に尊敬される。
人の心は目に見えません、だからこそ人は「礼儀」としてのその姿や態度を見て相手の人格を判断するところがあります。
荀子が登場するまでは、儒教はきれいごとにすぎなかった、のかもしれません。しかし「礼」を重視する考えのおかげで「礼」が目に見えるようになり、乱れた世の中がよくおさまるようになったのです。意外なことに性悪説を述べた荀子が、これらの社会規範を形づくったと言えるのです。
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