DailyReport巻頭言

2019年7月号 月初の言葉 伴侶 【DailyReport巻頭言 第106回】

社会医療法人黎明会北出病院

今月の表紙:社会医療法人黎明会 北出病院(和歌山県)

「内助の功」という言葉があります。経営者夫妻を見ると良くも悪くも、妻の力というものを感じることが多々あります。

浪人の身から土佐一国を任されるまでの大名となった山内一豊。その妻、千代の「内助の功」は有名です。今も昔も国の軍事力を見せつけるため軍事パレードが存在します。貧乏侍であったはずの山内一豊は、その馬揃えという軍事パレードで立派な馬にまたがっていました。それに目をとめた織田信長が彼を引き上げたことが出世の始まりでした。実はその馬は、千代が夫にひそかにしながら貯めていたお金を「今こそ、このお金をお使いください」と差し出したからこそ購入できたのです。日々の暮らしは質素にしながらも夫がいざ、というときのために夫の知らないところで少しずつ貯えていたのです。

私のよく知るある医療機関の理事長の奥様は、患者様に安らぎを得ていただきたい、そのためにも病院内に飾るものは、造花ではなく生花にしたい、と考えていらっしゃいました。そこで早朝より1時間ほどの時間をかけ、お一人で院内を回り生花を飾っていた、と聞きます。最終的にはそれを奥様一人にしていただくわけにはいかないということで、事務部門のスタッフが一緒になって回るようになった、と聞いたことがあります。そのように患者第一の姿勢で率先垂範する方が経営者の奥様として存在すれば、自ずから職員は能動的に動くことになるのではないでしょうか。

この数回、ご紹介している太宗の妻、長孫皇后も名君の妻としてふさわしい方でした。

太宗は一頭の素晴らしい馬を保有していました。しかしその馬が理由不明で突然死んでしまうという事件が起こりました。太宗はこのことに激怒し、馬の世話役人を殺そうとするのです。その時に、長孫皇后は「あなた(太宗)はこの話を知らないわけではないでしょう」と優しく諫めるのです。その話の内容が以下のものです。

昔斉の景公馬の死するを以て人を殺さんとす。晏子其の罪を数(せ)めんと請いて云う、「爾、馬を養いて死せり。爾が罪の一なり。公をして馬を以て人を殺さしむ。百姓(ひゃくせい:人民のこと),之を聞けば、必ず吾が君を怨む。爾が罪の二なり。諸侯之を聞けば必ず吾が国を軽んず。爾が罪の三なり」

(『貞観政要』納諫)

(現代語訳)

昔斉(せい:国名)の景公は、飼っていた馬が死んだのを理由に係の人を殺そうとしました。その時晏子(斉の国の宰相、晏嬰)が、その罪を追及させて下さいと願って言いました。「お前は、馬を養っていて死なせてしまった。これがお前の第一の罪だ。また、主君(景公)に人を殺させようとした。民がこのことを聞けば、必ず主君を恨むであろう。これがお前の第二の罪だ。他国の諸侯がこれを聞けば必ずわが国を軽視するであろう。これがお前の第三の罪だ。

このことを聞いた太宗は、係りの者の罪を許します。そして、部下にこう言うのです。「皇后(妻)は諸々のことについて教え導いてくれる、きわめて有益である」と。

このことに素直に耳を傾けた太宗も、事例を挙げて自らが気づくように優しく諫めた皇后も素晴らしい、と感じます。

経営者は素晴らしい伴侶の存在が大きいように思います。夫婦の関係は対等という表現ではなく補完の関係にあるように思います。強さと優しさが一体化するからこそ素晴らしいものが生み出され、それが経営に生かされているように感じるのは私だけではないはずです。

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ABOUT ME
堀田慎一
経営コンサルタント/MBA/大阪市立大学大学院非常勤講師 1992年より2015年まで大手経営コンサルティング会社にて勤務。うち2002年から2005年まで一般財団法人医療経済研究・社会保障福祉協会医療経済研究機構にて勤務。2016年より一般社団法人国際福祉医療経営者支援協会代表理事。