DailyReport巻頭言

2019年9月号 月初の言葉 天の命ずる職務 【DailyReport巻頭言 第108回】

地域密着型総合ケアセンターきたおおじ(京都府)

今月の表紙: 地域密着型総合ケアセンターきたおおじ(京都府)

平成に代わる新元号が「令和」となりました。出典は日本最古の歌集「万葉集」からです。過去の元号の出典はすべて中国の古典に由来していました。出典を和書に求めたのは初めてだと思われますが、これまでにも日本の古典から選ぶという考え方はあり、万葉集などの歌集はその有力候補でありました。

よってこの紙面でも今回からは、和書の古典として佐藤一斎の「言志四録」を紹介したいと思います。

佐藤一斎とは、美濃国岩村藩出身の著名な儒学者であり、陽明学者でもあります。「言志四録」とは、一斎が後半生の四十余年にわたり記した随想録であり、指導者のための指針の書とされています。

「言志四録」は、『言志録』、『言志後録』、『言志晩録』、『言志耋(てつ)録』の4書の総称であり、西郷隆盛の終生の愛読書でもありました。西郷は「言志四録」の全1133条を熟読し、特に心に残った101条を選出、それらを書きとめ、常に傍に置いていたと言われます。その101条は後に『西郷南洲手抄言志録』として世に出ました。

2001年(平成13年)5月に総理大臣、小泉純一郎が、衆議院での「教育関連法案」審議中に、言志四録について以下のことを述べ、知名度が上がりました。

「少(わか)くして学べば、即ち壮にして為すこと有り。壮にして学べば、則ち老いて衰えず、老にして学べば、則ち死して朽ちず」

(『言志晩録』第60条)

(現代語訳)
「少年時代に学問しておけば、壮年時代になってそれが役に立つことができるし、壮年時代に学間しておけば、老年になっても気力の衰えることがない。老年になっても学間すれば、それが社会に役立つことになるから、死してもその名が朽ちることがない。

また、このようにも述べています。

「諺に云わく、禍は下より起ると。余謂えらく、「是れ亡国の言なり。人主をして誤りて之を信ぜしむ可からず」と。凡そ禍は昔上よりして起る。其の下より出づる者と雖も、而も亦必ず致す所有り。成湯の誥に日く、「爾、万方の罪有るは、予一人に在り」と。人主たる者は、当に此の言を監みるべし」

 (『言志録』第102条)

(現代語訳)
諺に「禍は下より起る」ということがあるが、私は「この諺は亡国の言であって、人主をして誤ってこれを信じさせてはいけない」と思っている。総て禍というものは、上から起るものである。下から出た禍であっても、また必ず上に立つ者が、そうさせる所があるものである。殷の湯王の誥に「汝ら四方の国々の人民が罪あって法を犯すのは、上に立つ自分の責任である」とある。誠に至言である。人主たる者は、この湯の言を手本とすべきである。

また、一斎は言志録10条でこうも述べています。「人間はだれでも皆、次の事を反省し考察しなければいけない。それは「天は何故に自分を此の世に生み出したのか。また天は我れに何の用をさせようとするのか。自分は既に天の生じた物であるから、必ず天の命ずる職務がある」と。

私はここにぶれない優れた経営者の資質が記されているように思うのです。

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ABOUT ME
堀田慎一
経営コンサルタント/MBA/大阪市立大学大学院非常勤講師 1992年より2015年まで大手経営コンサルティング会社にて勤務。うち2002年から2005年まで一般財団法人医療経済研究・社会保障福祉協会医療経済研究機構にて勤務。2016年より一般社団法人国際福祉医療経営者支援協会代表理事。