講義録

診療情報・指標等作業グループにおける分析について(報告) 湯原淳平(社会福祉法人こうほうえん)

湯原淳平

テーマ:診療情報・指標等作業グループにおける分析について(報告)
講演者:湯原淳平(社会福祉法人こうほうえん)

※9月5日「診調組 入ー2」資料より転載

診療情報・指標等作業グループを計三回開催し、入院医療機能の評価指標等について、中医協及び入院分科会での指摘事項等を踏まえた分析・検討を行ったため、以下の通り報告する。

(2020 年度診療報酬改定に向けた検討)
1.入院患者の医療・看護の必要性に係る指標に関する事項

(1)概要
・ 重症度、医療・看護必要度、医療区分・ADL区分、FIMについて、平成 30 年度診療報酬改定における評価方法の見直し等を踏まえ、指標の特性や患者の状態等の分析・検討を行った。

(2)主な意見等
① 重症度、医療・看護必要度に関する分析(P5-P45)
・ 平成 30 年度改定で新たに追加した「B14 又はB15 に該当し、A1点かつB3点以上」(以下、基準②という)のみに該当する患者のうち、A1点が「心電図モニター」である割合が多いが、そのような患者についてさらに分析してはどうか。
・ 基準②のみに該当する患者割合は病床規模が小さい病院に多い傾向。
・ いずれの基準にも該当しない状態から基準②のみに該当する状態に移行した患者については、基準非該当日における各項目の該当状況を分析してはどうか。また、治療によって状態が改善することで、かえって基準②に該当するようになる場合があるのではないか。
・ 基準②のみに該当する患者は、高齢で要介護度が高いなど、退院に向けて関わる必要がある患者という特徴があるのではないか。
・ B項目は重症度ではなく患者の状態なので、急性期入院医療の指標としてはB項目単独で考えるのではなく、医療の指標であるA・C項目との組合せをみていく必要があるのではないか。
・ B項目を組み合わせた基準は、年齢や認知症の有無等と一定の関係性があり、これらの評価と合わせて考える必要があるのではないか。
・ B項目の評価や記録には一定の負担が伴うが、患者の日々の状態を把握するために記録することには意味があるのではないか。
・ 入院中のB項目の該当状況の変化について、手術等の有無を含めて分析してはどうか。
・ 「A2点かつB3点以上」の基準のみに該当する患者をみると、A2点は「専門的な治療・処置」が多く、当該項目は「免疫抑制剤の管理」の占める割合が多い。
・ 注射薬や内服薬の入院・外来における使用状況は薬剤の種類によってばらつきがあるが、入院・外来のいずれで使用するかは患者の状態や治療の状況、施設の方針等によるため、どちらが望ましいとは一概に言えないのではないか。
・ 入院の必要性は個々の患者の状態を踏まえて判断されるが、患者の状態によらず通常入院で行う手術等の医療行為については評価対象とすべきではないか。そのためにも、外来で行うことが比較的多い医療行為については、評価対象から外す等の整理をしてもよいのではないか。
・ 手術の評価にあたって、術後の一定期間をICUで管理することが多い手術があることに留意が必要。
・ 評価法ⅠとⅡにおける個別項目の該当状況の差については、判定ルールに違いがあることや、評価法Ⅱの入力の精度による影響が大きいのではないか。

② 医療区分・ADL区分に関する分析(P46-P83)
・ 医療区分とADL区分には一定の相関が見られるのではないか。
・ 入棟時に医療区分の項目に該当している場合については、入棟前から該当する状態であった場合と、入棟日から該当するようになった場合があるのではないか。
・ 医療区分が改善して退院した場合や死亡退院した場合には、調査対象から外れるため、本調査を用いて、病棟における患者の状態の改善について評価を行うことは困難ではないか。
・ 中心静脈カテーテルについて、代替する栄養補給法がない等の医療的な事情や家族の希望により長期間留置を行う場合があるのではないか。長期間留置する場合にはカテーテル感染などの合併症に注意する必要があるのではないか。
・ 喀痰吸引について、嚥下機能が低下している患者等に対して、誤嚥を防止するために口腔内の唾液等を吸引する場合もある。
・ 認知症と医療区分の該当項目の関係については、併存疾患の影響を考慮すべきではないか。

③ FIMに関する分析(P84-P105)
・ 脳血管疾患等の患者については、他の疾患区分に比べて、入棟時から退棟時のFIM得点が改善していない患者が多いが、発症から入棟までの期間が長いことによるのではないか。
・ 入棟時から退棟時までのFIM得点の変化が年々増加傾向にあることについては、発症から入棟までの日数が短くなったことにより、FIMが低い状態からリハビリが開始されていることによるのではないか。
・ 入棟時から退棟時のFIM得点の変化が増加している時期と、発症から入棟までの期間が短縮している時期とが異なることを踏まえ、引き続き検討が必要ではないか。
・ 退棟時のFIM得点は、経年的にもさほど変わっていないが、この解釈について、引き続き検討が必要ではないか。
・ 実績指数の導入に伴い、FIMの改善が期待できる患者を選択的に入院させている可能性があるのではないか。
・ FIMと日常生活機能評価の関係性については、個別の症例におけるばらつきが大きい一方で、平均値及び中央値で見ればある程度相関していることから、患者全体を見る指標としては、類似しているのではないか。

(3)今後の方向性
・ 作業グループにおける分析・検討を踏まえ、分科会において入院患者の評価指標の在り方について議論を行う。

2.データの利活用の在り方に関する事項(P106-P112)
(1)概要

・ DPC退院患者調査における診療実績データについて、平成 30 年度改定においてデータの提出を要件とする対象や提出項目を拡大したことを踏まえ、公開するデータの範囲や集計方法等の検討を行った。

(2)主な意見等
・ 現在、公開されているデータは、自施設の診療内容等を客観的に確認する目的等で広く利活用されている。
・ 回復期リハビリテーション病棟や療養病棟は、全ての病棟がデータを提出することとなっていないため、公開するにあたってはそのような点に留意が必要であることを記載してはどうか。
・ 回復期リハビリテーション病棟や療養病棟に特徴的な項目として、FIMや要介護度等の情報を公開することとしてはどうか。

(3)今後の方向性
・ 今後、具体的な公開データの集計方法等については、DPC/PDPS 等作業グループにおいて検討を行う。

(中・長期的な検討)
3.入院医療機能の適切な評価指標や測定方法等に関する事項(P113-P117)
(1)概要

・ 平成 30・31 年度厚生労働科学研究(「急性期の入院患者に対する医療・看護の必要性と職員配置等の指標の開発に係る研究」(研究代表者松田晋哉))を踏まえ、急性期から長期療養まで含めた、入院医療機能の適切な評価指標や測定方法等について意見交換を行った。

(2)主な意見等
・ 医療内容の評価については、急性期と長期療養では行われる医療の目的や内容が異なることを踏まえ、それぞれを適切に評価する指標を検討すべき。
・ 患者状態の評価については、急性期から長期療養までシームレスに患者像を把握・評価することを検討すべき。なお、ADLが改善することで、かえって看護業務量が増える場合があることに留意が必要。
・ 現在の重症度、医療・看護必要度のB項目は、患者状態と行為実施の有無を合わせた評価指標となっていることをどう考えるか。
・ 将来的にはアウトカムに対する評価を組み込むべき。

(3)今後の方向性
・ 引き続き研究班において、入院医療機能の適切な評価指標や測定方法等について研究を行い、必要に応じて作業グループにおける意見交換を行う。

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ABOUT ME
堀田慎一
経営コンサルタント/MBA/大阪市立大学大学院非常勤講師 1992年より2015年まで大手経営コンサルティング会社にて勤務。うち2002年から2005年まで一般財団法人医療経済研究・社会保障福祉協会医療経済研究機構にて勤務。2016年より一般社団法人国際福祉医療経営者支援協会代表理事。