DailyReport巻頭言

2018年1月 月初の言葉 中国古典の歴史の知恵を自らの人生に活用する【DailyReport巻頭言 第88回】

2018年1月医療法人維誠会

今月の表紙:医療法人維誠会 住宅型有料老人ホーム・訪問介護ステーション「とうはら」

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」の格言もあるように、古来、優れたリーダーは歴史上の人物の格言・振る舞いから多くの教訓を得てきました。中国古典の歴史の知恵を自らの人生に活用できる古典は、その格好の教材と言えます。まず、新年の第一号は中国の古典について考えていただくきっかけにしていただくべく、簡単にその歴史・背景を日本の歴史も含めてご紹介します。

紀元前403年、中国において戦国時代が始まります。日本においても戦国時代と呼ばれる時期があります。室町時代の応仁元年(1467年)に発生し、文明9年(1477年)まで継続した内乱が応仁・文明の乱(おうにんぶんめいのらん)です。乱以後の乱れた世相を、当時の公家が古代中国の「春秋・戦国時代」の乱世になぞらえ「戦国の世」と表現したことに由来します。

戦国時代当時の中国には連合体から成る数多くの国家が存在しましたが、弱小国は大国に次々と併合されていき、領域国家へと成長を遂げた秦・楚・斉・燕・趙・魏・韓の七国に収れんしました。

この時代には、鉄製農具や牛耕の登場により農業生産力が向上し、それにともなって青銅器が鋳造されるなど商工業も発達しました。諸侯は治水や灌漑、未開地の開墾、新都市の建設をすすめました。このこともありそれまで人口が多くてもせいぜい5万人程度だった都市国家が、やがて領土国家に変貌しその国都となった旧都市国家は30万人規模の都市に変貌するのです。

このような時代になるといかにして国ならびに国民を治めるかということが、大きな課題になります。そのため、このような戦乱の世をどのように過ごすべきかという思想が様々な人たちによって作られました。そのような思想を説いた人たちを「諸子百家」と言い、儒家、墨家、法家、道家、等があります。今でいうと経営コンサルタントのはしりです。当時でいえばどのように政治を行えばいいか、という点について諸子百家がアドバイスをし、現代社会はどのように経営をしていけばいいか、という点について経営コンサルタントがアドバイスをする、というところでしょうか。

まずここでは儒家(じゅか)の代表格である孔子をご紹介します。最初に少し歴史的なことを紹介しましたが、多くの場合「孔子」や「論語」は知っていてもそれまでの歴史や背景はわからないものです。それらが、誕生するにあたった背景を知ることは理解を促進するうえで大切なことです。紹介したように「論語」のような思想が必要であった、やむにやまれぬ社会的背景があったということなのです。

儒家とは孔子を祖とする学派です。家族に対する孝悌を重んじそれを他に及ぼす仁を最高の道徳とします。孔子没後、孟子、荀子を輩出し、前漢時代には官学となりました。また儒教は「修己治人」の教えとも言われます。「己自身を修める」道徳説と「人を治める」民衆統治との政治説とを兼ねた教説が儒学の教え、とも言われます。要するに道徳と政治を中心とする思想です。この考え方は現代社会にも通用するので経営者は好みますし、東洋的思想を源流とする日本的な価値観の多くもこの儒教から多大な影響を受けています。

孔子が生まれたのは、紀元前551年あたりと言われています。没したのは前479年ですので数えで74年ほどの生涯でした。当時としてはかなりの長寿だったと思われます。

論語は、孔子を中心にしてその弟子の言行やお互いの問答を寄せ集めたものです。孔子の死後、その孫弟子たちが直弟子から聞いたものを持ちより、これが孔子の言行であるか、あるいは誰の言行であるかと議論して編集した短い語録をまとめたものです。

20篇、約500章から成り立っていますが、系統立っているわけではなく篇と篇、章と章との間には、直接つながりはありません。よってどこから読んでもいい、体裁になっています。しかしその1章1章が短いながら含蓄が含まれているので、長年読み続けられてきた、のです。

「一年の計は元旦にあり」と言います。皆さんも今年、平成30年(2018年)の過ごし方を考えたのではないでしょうか。その点でいうと昔から、人生の過ごし方を考える上では教科書にも掲載される次の一章を参考にされる方が多いでしょう。

子曰く、

吾れ十有五にして学に志ざす。

三十にして立つ。

四十にして惑わず。

五十にして天命を知る。

六十にして耳従う。

七十にして心の欲する所に従って、矩(のり)を踰えず。

この言葉をもとに40歳のことを「不惑」、50歳を「知命」、60歳を「耳順(じじゅん)」と言います。当時のことですから今でいうと50歳くらいが「不惑」の年齢になるという感覚ではないかと思います。

孔子は40歳、50歳あたりを人生の大事な分岐点として考えていたのか、そのあたりの年齢での心構え的なことをいくつか、述べています。

子の曰く、後生畏るべし

焉んぞ来者の今に如かざるを知らんや

四十、五十にして聞こゆる無きは、

斯れ亦た畏るるに足らざるなり

後世とは若者のこと、です。この内容は、これからの若い人が自分に及ばないなどとどうしてわかるものか、若者を侮ってはいけないと前半で言っています。そして後半は、四十歳、五十歳になってもその名が聞こえないような者は、畏るるに足りない、と痛烈な一言を与えているのです。若者にとやかく言う前に、自分を磨いたらどうか、と言われているようで、私もこの内容には気が引き締まる思いがしたものです。

また、このような内容もあります。

子曰く、年四十にして悪まる、其れ終わらんのみ

四十歳にして、名声をあらわすどころか人に憎まれるようではその人はおしまいだ、というところでしょうか。ただ、この時代の四十歳は、晩年と言ってもいい頃でしょうから現代とは年齢の点では少しずれはあるものと思います。二千年以上前の書籍ですが、自分のこととしてとらえると胸に響くことが多いように感じるのは私だけではないと思うのです。

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ABOUT ME
堀田慎一
経営コンサルタント/MBA/大阪市立大学大学院非常勤講師 1992年より2015年まで大手経営コンサルティング会社にて勤務。うち2002年から2005年まで一般財団法人医療経済研究・社会保障福祉協会医療経済研究機構にて勤務。2016年より一般社団法人国際福祉医療経営者支援協会代表理事。