韓非は法家思想の大成者とされています。それは彼に先立つ前駆的な法思想を受け継いで、修正を加えながら、総合して新しい体系を形作ったからです。彼が受け継いだ思想の主なものは商鞅(しょうおう)の「法」、申不害(しんふがい)の「術」、慎到(しんとう)の「勢」でした。
「韓非子」の内容の特徴は「人間不信」です。人を信じない、そのような状態から人を管理する、ということです。冷酷なまでに人間の実態を見据えながら、権力の本質を分析している姿がそこにあります。韓非自身が裏切られ続けた人生であったから、ということも背景にあると思います。そこにはトップのおかれている困難かつ孤独な立場を浮き彫りにしています。そのような中でどのようにして権力維持を図るか、を述べているのです。その代表的なものが「法」、「術」、「勢」なのです。
「法」とは、法律のことです。はっきりとした成文として交付され、厳しい賞罰をともなって施行される経験的具体的な規定です。本文にはこうあります。「罰せられると決まっていれば、いくら欲しくても目の前の黄金に手を付けるようなことはしない。だから賢明な君主は、その罰則を法によって厳しくして逃れられないようにするのだ」君主とはこの法を周知徹底させて組織を掌握し、自分はその上に立ち、黙ってにらみをきかせよ、ということです。
「術」とは、「法」を運用して配下のものをコントロールするための手法です。
それは臣下の「名(言辞)」と「刑(行為)」とを厳しく対照して、その結果や責任を問う、という特色から「刑名参同術」(けいめいさんどうじゅつ)とも呼ばれました。また韓非は、君主は自分の意思を群臣に見せてはならない、臣下がそれに迎合して君主の目をくらますからだ、と言っています。韓非にとって法は万人に明らかにするのに対して、術は君主の胸中に秘めて人に漏らさぬものなのです。
明主の道は法を一(いつ)にして智を求めず、術を固くして信を慕わず。故に法敗(やぶ)れずして、群官姦詐(かんさ)なし。
(『韓非子』五蠹(ごと))
(現代語訳)
明君たる道は、法を統一することであって、智者を追い求めることではない。
術を確実に実行することであって、人の誠実さなどにたよることではない。この方法さえ行われれば、法の効力は失われず、君主をあざむく臣下は影をひそめるであろう。
「勢」とは、権勢とか権限とかいう意味です。リーダーは権力の要諦をおさえておけばそれでよい。部下のやるべきことにまで手を出していたのでは、やせ細るほどあくせくしても、効果は上がらない、ということです。
君主とは親のようなものです。親という感じは木の上に立って見る、と書きます。親としての責任を移譲することはありませんが、そのような態度、態勢も重要です。
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