DailyReport巻頭言

2018年4月 月初の言葉 苦しい時を乗り越える【DailyReport巻頭言 第91回】

2018年4月社会医療法人誠光会 草津総合病院

今月の表紙:社会医療法人誠光会 草津総合病院

前回、責任を一身に背負い、部下たちを自分の体のように慈しみ大切に扱うことで繁栄をもたらす、しかし経営者がこの境地に至るまでには塗炭の苦しみの歴史が欠かせない、と書きました。

これまでご紹介してきた孔子や孟子もまさしくそのような苦難の人生を生きた人達でした。この二人とも自分を活かし活用してくれる王朝を望んだのですが、生きているうちにそのような政治を果たす夢は結局遂げられなかったのです。今風に言えば上司に恵まれなかった、というところでしょうか。

今もそのようなことはよく聞かれる話です。もちろん、経営者にだけ責任があるとは言えません。人をつかう立場とつかわれる立場とではその考え方は全く違います。職員側が経営について不平不満を並べることはよくあることでしょう、しかし経営者側が職員に不平不満を並べるだけでは世間は評価をしてくれないでしょう。経営者が職員をきちんと教育しないのが悪いのだ、と言われるからです。経営者側も人には言えない辛さが数多くあるものです。

孟子は題辞(章の名称のようなもの)のなかでこのように述べています。

「自分はこのまま生涯を終わったときになんら名声(真価)が後世にほめたたえられないのを恥じた。それで人間の規範となるような立派な言葉を吐いて、後世の人々に書き残したのだ」と記されています。このことが「孟子」という名著が生まれるきっかけの一つになったとも言えるでしょう。

孟子は、こう述べています。

『天の将(まさ)に大任をこの人に降(くだ)さんとするや、必ずその心志(しんし)を苦しめ、その筋骨を労せしめ、その体膚(たいふ)を餓えしめ、その身を空乏せしめ、そのなさんとする所を沸乱(ふつらん)せしむ。心を動かし、性を忍ばせ、その能(よ)くせざる所を曾益(そうえき)せしむる所以なり』
(告士章句下)

(現代語訳)
「天が人に大任を授けようとするときは、必ずまずその人の精神や身心を苦しめ、その筋骨を疲れさせ、窮乏の境遇におき、その行動を失敗ばかりさせて、わざわざその人を鍛えるものなのである。それは、天がその人のこころを鍛え、忍耐力を増大させ、大任を負わせるに足る人物に育てようとしている、この苦しい状態は天が期待している証拠なのだ。

この文章の前に、古人の実例として今でいう総理大臣のような立場となった5人の人達を実名をあげて紹介しています。それぞれ、農夫や罪人、道路工事の人夫、魚や塩の行商人、貧しい市民だった人生から国を担う人に成長した人達が紹介されています。それらの人たちは、皆この壁を乗り越えてきた、と言うわけです。彼らのその苦労は筆舌に尽くしがたいものがあったであろうと容易に推測できます。

明治維新の影の功労者である吉田松陰もこう述べています。

「境、順なる者は怠り易く、境逆なる者は励み易し」

(現代語訳)
万事都合よくいっているものは、怠りがちとなる。思うようにならずに苦労ばかり多い境遇にあるものは励むことが多い

やはり人間の勝負はこの苦しい時をどう乗り越えるか、ということにあるようです。哀しいかな人は、辛いことや苦しいことがあってこそ頑張りがきくもののようです。きっと、そのつらい時期をいかにして乗り切るのかが、その人の人生を決めるのでしょう。

また、経営も皆がつらい時にこそ、将来の勝負が決まる、と言います。成長する組織は不況の時こそ、他法人を追い抜いて成長するからです。

「ピンチはチャンス」と捉えて進みたいものです。

DailyReport無料購読はこちら

PDF版は無料でご購読いただけます。
毎月25日に、ご登録いただいたメールアドレスに、来月号のDailyReportをお送りします。
職員さんとスマートフォン等でお読みいただいたり、部門長の方の日々の朝礼での一言にご活用いただいたり、デジタルのツールとしてご使用いただく方は、こちらよりご登録ください。

 

我々は、医療・介護・福祉のすべての人に有益な情報をお届けする活動をしています。
ぜひ以下のサイトもご参考になさってください。

一般社団法人
国際福祉医療経営者支援協会

一般社団法人
これからの介護医療経営塾

現在、病院管理者養成塾、第1期生募集中です。

医療・介護・福祉に携わるすべての人に読んでほしい
Daily Reportの詳細は下記をご覧ください。

堀田の書籍はこちら
コミュニケーション活性化で組織力向上! 経営者・管理者が変える介護の現場
ABOUT ME
堀田慎一
経営コンサルタント/MBA/大阪市立大学大学院非常勤講師 1992年より2015年まで大手経営コンサルティング会社にて勤務。うち2002年から2005年まで一般財団法人医療経済研究・社会保障福祉協会医療経済研究機構にて勤務。2016年より一般社団法人国際福祉医療経営者支援協会代表理事。