DailyReport巻頭言

2018年11月 月初の言葉 人心掌握のために必要とされたこと【DailyReport巻頭言 第98回】

2018年11月社会福祉法人あいのかわ福祉会 那須共育学園

今月の表紙:社会福祉法人あいのかわ福祉会 那須共育学園

これまで学派で言うと、儒家、墨家、道家、個人名だと孔子、孟子、荀子、墨子、老子について触れてきました。

孔子や孟子の儒家思想は今日に至るまで正統派思想として社会的にも、政治的にも枢要な地位をこれまで占めてきました。老子や荘子の道家思想は、その裏面で人生についての深い思索を誘う裏方役を務めてきた、と言ってもいいでしょう。法家思想はそれらに比較すると、知名度はいまひとつかもしれませんが、その考えが秦の始皇帝を産み出し、国としての発展を成し遂げた原動力となったとも言えるのです。そこで今回は法家について述べていきます。

法家の代表的な人物、書籍と言えば、韓非子(かんびし)です。その特徴の一つは非情な人間観です。とにかく冷めた物の見方をするのです。現代の経営論からすると冷たすぎるようにも思えますが、経営者であればこの感覚はとてもよくわかるはずです。逆に言うならば、経営者はこのような非情な人間観もどこかでは理解しておかねばならないとも言えます。この思想は韓非(韓非が名前、韓非子が書名のため、韓非と表記)の生まれた環境によるところも大きいのですが、その点はまたあらためて触れることにします。

彼はこう言います。人間とは一人一人が自分の利益を追求する存在だ、恩愛で結ばれていると思うのは、甘く間違った考えである。親子の中でさえ、男の子が欲しい、女の子は嫌だ(歴史的に中国では男の子を欲する社会的通念が長い間続いた)などと考えるのは、利害の心が働いているからであり、ましてや他人である君主と民衆の間ではなおさらのことだ。(六反編)蚕は芋虫に似て気味が悪いが人がそれを平気でつまむのは、生糸が利益を生み出すからだ。(説林下編)危険な戦争にも命を投げ出し、君主のために忠節を尽くすのは、もちろん恩賞が目当てなのだ。(守道編)

このように非情な冷たい人間観を持っていました。しかしこのことは人間の現実を深くえぐりだしているようにも感じます。もちろん、韓非は利害を超越した高潔な人物がいたことはわかっていたはずですが、それはほんの少数である、ととらえ、人間の歴史は利益追求を軸として動き、恩賞で釣って刑罰でおどすのが、人々を支配する第一の方策だ、と考えていたのです。

皆安利(あんり)に就き、皆危窮(ききゅう)をさく
(『韓非子』五蠹(ごと)編)
(現代語訳)
人間というものは、皆安全で利のある方向に向かい、危うく切迫しているようなところを避けるものだ。

だからこそ人心掌握のためには、賞罰こそが人間を動かす重要な原動力になると説いているのです。

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ABOUT ME
堀田慎一
経営コンサルタント/MBA/大阪市立大学大学院非常勤講師 1992年より2015年まで大手経営コンサルティング会社にて勤務。うち2002年から2005年まで一般財団法人医療経済研究・社会保障福祉協会医療経済研究機構にて勤務。2016年より一般社団法人国際福祉医療経営者支援協会代表理事。