実録 蘇生した介護老人

第7話 リハビリ開始 -実録 蘇生した介護老人-

第7話_リハビリ開始_実録蘇生した介護老人

院長の私に対する治療方針はリハビリの積極的実施だった。1月の後半から院長指定のリハビリの先生が付いた。息子は先に室内履きの靴を宅送してきていた。リハビリで動くときに滑ったり脱げたりしないためのものだ。

始めはリハビリの先生の腰に前から捕まって、赤ん坊のようによちよち歩きしながら2階の廊下を廻り、次は腰の後ろにつかまって2階から3階までエレベーターに乗り、2階より広い廊下を歩いた。生まれて初めてヨチヨチ歩きを始める赤ん坊のための歩行訓練だ。「俺は赤ん坊なのだ」と自認せざるをえない。2階、3階とも、病室や事務室がどこに配置されているか知りたくてキョロキョロした。3階には個室が2、3戸あった。 歩いているときに、他の人とは全然顔を合わせなかった。ここの患者が廊下を歩くことはないのかもしれない。この程度の訓練では全然疲れは無かった。

リハビリでもおしめが関係する。先生がベッドに来て、30分後位の「2時頃リハビリをしましょう」と言う。「いいですね。」と大人しく答える。が、実はその時、おしめがウンコでごネゴネになっており、おしめ交換が2時頃までに終わっていなければ、臭い物に蓋が出来ないどころか、それをぶら下げて先生と歩かなければならない。リハビリ開始のときにはそういう心配をまともにした。

その心配に対処する方法は二択しかない。自他共に臭い物(ぶつ)をぶら下げたまま歩くか、物が出ていない状態にするかである。リハビリの実施時の延期を願うという第三択は物理的にも論理的にも成りたたない。今物を出している最中でない限り、物がいつ出るか先生に対して保証出来ないだろう。

この問題は、実際上は発生しないで済んだ。全部が事前のおしめ交換に間に合った、 物を出さないようにして間に合わせたのだ。

リハビリは男性と女性の先生とが二人いた。二人とも若い先生だ。女先生に言った、「先生と向かい合って腰に掴まるのはマズいですね。抱きついたらいけないでしょぅ。」「あはは」と笑われたが、実際は手をつないで歩いた。その先生とは二度以上歩く機会はなかった。

男の先生は英会話が趣味なのか “How are you ?” と呼びかけてきた。“I am fine, thank you. And you?” と返したが先生からのその続きが無かったので、“Shall we study English conversation, together? ”(一緒に英会話の勉強をしませんか)と続けたら”Yes”と言ったが、後は続かなかった。

その先生は、その後数回歩行訓練を呼びにベッドサイドに来て “Hello”と呼びかけられ“Hello”で返しただけで、それ以上英会話はせず、3階の廊下を歩きながら部屋の構造・配置.などの説明を受けた。

息子がB病院を去る日を院長と相談して2月13日(土)と定めたので、心残りが色々あった。この先生と一緒に歩くことが楽しみだったのだ。それは病室内―否、ベッドでの生活―ではなかったからだ。

院長からは、「リハビリが一番大切ですから、しっかりやって下さい」と、繰り返し言われた。

次回へ続く・・・

 

著者プロフィール

大山 Tak 卓 1931年生まれ。

介護ホームローズ(仮名)入居者。東京大学法学部卒。国税庁入庁(大蔵事務官)、税務署長。エッソ石油(現エクソンモービル社子会社)税務部に転職、東京及びニューヨーク本社在勤。その後、ファイナンス会社数社の経営に参画。対米、カナダ、香港の投・融資・契約業務実施。国際経営コンサルタント。

編集者:野口 Kao 廣太。1986年生まれ。介護ホームローズ(仮名)施設長。理学療法士。デンマーク国立Egmont校卒。スヌーズレン施設設立。教員アシスタント。デンマーク福祉施設にて障碍者、高齢者への支援を実施。

 

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ABOUT ME
堀田慎一
経営コンサルタント/MBA/大阪市立大学大学院非常勤講師 1992年より2015年まで大手経営コンサルティング会社にて勤務。うち2002年から2005年まで一般財団法人医療経済研究・社会保障福祉協会医療経済研究機構にて勤務。2016年より一般社団法人国際福祉医療経営者支援協会代表理事。