実録 蘇生した介護老人

第12話 テレビのルール -実録 蘇生した介護老人-

テレビのルール ー実録 蘇生した介護老人ー

明け方5時頃に起きる人たちが何人もいるのだろう。着替えを済まして三々五々、食堂ホールの各人の席に車椅子で来る。5時40分頃にリモコンで電源を入れる。突如でかい音がレム睡眠で昔の夢を見ていた私を叩き起こす。音量は40以上だろう。部屋の出入り口の引き戸は開け放しになっているから、朝方は30でも十分聞こえてくる。これらの人はテレビを、目的意識を持って見るのではなく、例えては悪いが、猫が画像を追うのと同じだと思う。事実、40の音量でも座ったまま船を漕いでいる人が過半を占めるのだ。しかも、朝方からだ。

夕飯後の6階北側のホールでは、部屋に帰る人たちを見送ったのち、7時には消灯することになっており、その時にはテレビを消さねばならない。残った希望者は職員に連れられて、南側のホールに集団移動し、南側の人達と合同して各人好きに過ごすことになっている。南ホールの消灯は9時だ。そこでテレビを見る人には猫族はおらず、料理、クイズ、バライエティーを選好する人が多い。
私は南側での夜の2時間を、本・新聞読みとテレビとの半々で過ごすようにした。猫族がいないので音量は33位で、7~8人が聞こえる範囲に座っている。

ところで、テレビのチャンネル選びやオン・オフの権限者が誰になるかが問題になる。食事の直前・直後は配膳スタッフがやる。 日中はスタッフが付けたままのチャンネルになっている。見る人は猫族が多いから自分ではまず付けないし、消しもしない。私がいじるときは、目的は音量の絞りだけだ。皆に「少し音を下げますよ」と断って、耳の少々弱い人でも聞こえる33位にする。誰も異議を唱えない。

私はテレビへの関心は薄い。NHKの朝ドラは、前は見られる限り見ていたが、老健では朝食の時間中にはテレビを切られても気にならない。日曜日は朝8時6チャネルの「サンデーモーニング」を必見していたが、これは、私は、今は諦めている。

居住者がテレビを付け直した時のTVの音量は消された時の音量のままである。夜7時の消灯時に、私が音量を33に下げておかないと40位に設定されていた音量がそのまま明け方に吠え出すのである。リモコンに今設定されている音量を朝の一定時に自動的に下げる方法がないのだろうか?エアコンにはあるだろう。

次回へ続く・・・

 

著者プロフィール

大山 Tak 卓 1931年生まれ。

介護ホームローズ(仮名)入居者。東京大学法学部卒。国税庁入庁(大蔵事務官)、税務署長。エッソ石油(現エクソンモービル社子会社)税務部に転職、東京及びニューヨーク本社在勤。その後、ファイナンス会社数社の経営に参画。対米、カナダ、香港の投・融資・契約業務実施。国際経営コンサルタント。

編集者:野口 Kao 廣太。1986年生まれ。介護ホームローズ(仮名)施設長。理学療法士。デンマーク国立Egmont校卒。スヌーズレン施設設立。教員アシスタント。デンマーク福祉施設にて障碍者、高齢者への支援を実施。

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ABOUT ME
堀田慎一
経営コンサルタント/MBA/大阪市立大学大学院非常勤講師 1992年より2015年まで大手経営コンサルティング会社にて勤務。うち2002年から2005年まで一般財団法人医療経済研究・社会保障福祉協会医療経済研究機構にて勤務。2016年より一般社団法人国際福祉医療経営者支援協会代表理事。